「答え、出てるんじゃない」
「え?」

一通りの話を聞き終えた彼女の言葉に思わず目を瞬かせる。
そんな俺を一瞥したあと、麻子ちゃんは少しだけ口角をあげて優しい眼差しをこちらに向けた。

「言葉を無くしたら、気持ちが見えなくなるんだよね」
「…ちょっと難しいんだけど」

わかるようなわからないような、そんな麻子ちゃんの言葉の意味を全て理解できず聞き返す。
女性の言葉選びは、男の脳内で変換するには少し難しく感じることがあると思う。

「ねぇ、美己ちゃんのこと、どう思ってる?」
「どうって、それは…」

突拍子のないそんな質問に、先に続く言葉が途切れる。
だけどそれは、言葉が出てこなかったのではなくて。

「思いやりの形とか、その表現方法は変わったかもしれないけど、大切にする根本の気持ちは変わってないんじゃない?」

誰よりも大切で。
出会った頃と変わらず、大好きで。
毎日感謝していて。
これからもずっとそばにいてほしい。

そんな次々と溢れてくる言葉の中から、一つを選びきれなかったからだ。