「あとは何がいる?」
「えーっと、人参!」
予想よりも早く仕事が終わった私は、近所のスーパーを訪れていた。
自分も買い出しをすると言って一緒に来てくれた森ちゃんと一緒に。
「もう私、美己が愛しくて仕方がないよ」
「あはは、何それ」
笑いながらやってきた野菜コーナーで見つけた人参を買い物カゴに入れる。
カゴの中にはカレーを作るための食材が顔を揃えていた。
相手のことがわからないからこそ、自分から歩み寄る努力をする。
それが1日考えた私が導き出した、一つの答えで。
少しでも涼くんとゆっくり会話ができるきっかけになればいい。
そんな思いを込めて、今日は久しぶりに料理を作ることに決めたのだ。
「凝ったものは作れないから、それが難点なんだけど」
「こういうのは、腕前よりもなによりも気持ちが大事なのよ」
「…うん、涼くんもそう言ってくれる気がする」
「美己が選んだ人だもんね」
そう言ってくれる森ちゃんのおかげもあって、また少し上を向いた気持ちを抱えながらレジへと足を進めていた…ときだった。

