「お、檜山きたか」
その声に振り向くと、そこには先に着いていたらしい立花社長がいた。
彼も今日は濃いネイビーのスーツにワインカラーのネクタイと、いつもよりパーティ仕様の格好だ。
「お疲れ様です」と小さくお辞儀をした檜山に、立花社長は小さく手を上げ応えると、私の方へ視線を向ける。
「長嶺もお疲れ」
「立花社長、お疲れ様です。今日はすみません、私までお誘いいただいて……」
「いや、こちらこそ貴重な休みに悪かったな」
立花社長はそう優しく笑う。けれど、その隣には誰もおらず私は思わずたずねてしまう。
「あれ、奥様はどちらへ?」
「食事とりにいった。全メニュー制覇する、とさ」
ぜ、全メニュー?ちょっと見ただけでも結構種類あるけど……イメージと違って大食いなのかな。
ていうか、こういうパーティでそこまで食欲があるってすごい。そこはさすが社長夫人というだけの度胸だ。
けれど檜山はそんな奥様に呆れているのか、感心する私の横で怪訝そうに顔をしかめる。
その顔に立花社長が苦笑いを見せた、その時だった。
「匠?」
突然こちらへかけられた声に、私たちは三人揃って振り向く。



