一途な彼にとろとろに愛育されてます




それから私は少し穏やかな気持ちで杏璃さんとランチを楽しんだ。

彼女の底なしの食欲にはただただ驚いたけれど、美味しそうに食べる姿は愛らしく、立花社長が杏璃さんを選んだ理由がわかった気がした。



食事を終え仕事には戻ろうとした時も杏璃さんは『また一緒にごはん食べましょうね』と連絡先を交換してくれて、気さくな人だと思った。



とはいえ、やっぱり緊張するなぁ……。

その日の夕方、従業員用通路をひとり歩いていた私は緊張感からドキドキと鳴る心臓を落ち着かせていた。



もうすぐ仕事もあがりの時刻だ。帰宅をすれば檜山と顔を合わせることになるだろう。

逃げない、そう決めたけれど、本音は逃げ出したい気持ちもある。



なんて言おう、なんて伝えよう。

あぁ、考えれば考えるほど緊張してきた。



「おっ、長嶺」



すると、ちょうど向かいから歩いてきた田丸さんがひらひらと手を振りこちらへ小走りで来た。



「田丸さん。お疲れ様です」

「お疲れ。いやー、この前はありがとな。助かったよ」



この前……酔っ払った彼を泊めたときのことだろう。

思えばあれからなにかと忙しく顔を合わせていなかったことに気づいた。



あれ以来檜山も、田丸さんの話題を出すとどうしてか機嫌が悪くなるんだよね。

それもあってなんとなく顔を合わせづらかった。