「私のことは、上司の妻だから仕方なく面倒見てくれてるんですよ」
「え?」
上司の……妻?
杏璃さんって結婚してたの?それに、上司の妻って、檜山の上司って、それって。
「あの、上司というのは……」
「あれ?玲央さんから聞いてませんでした?」
玲央さんっていうのは、つまり、立花社長のことであって……もしかして。
「しゃ、社長の奥様ですか!?」
先日結婚したばかりという、あの!?
ようやくいたった結論に、杏璃さんは恥ずかしそうに頬を染めて笑った。
「ふふ、奥様だなんて照れちゃうなぁ」
あ、杏璃さんが立花社長の奥様……。
社長夫人というにはイメージと違う彼女に、私は唖然としてしまう。
そういえば先日のパーティの際も、全メニュー制覇するって言ってた……。この食欲なら確かに、出来てしまいそうだ。
ってことは、檜山の報われぬ片想い?
いや、そもそも私の勘違い?
でも、檜山は杏璃さんの話をして顔を赤くしていたし……。
……そういうところも含めて、杏璃さんのいう通り、ちゃんと聞いてみなくちゃわからないよね。
自分が傷つかないために予防線を張って、逃げるのはもうやめよう。
「……杏璃さん、ありがとうございます。私一回、檜山とちゃんと向き合ってみようと思います」
決意を固めて言った私に、杏璃さんは頷いて笑った。
ちゃんとこの気持ちを伝えて、彼の気持ちを聞く。
どんな結果だって、いつか『伝えてよかった』と笑える日が来ると信じて。



