「でも……檜山には、好きな人がいるって噂で」
心の中につっかえていたその話題を、勇気を出して杏璃さんへ振った。
「え?檜山さんに?だれだれ?」
まったく知らないようで不思議そうに首をかしげる。
そんな彼女を私は恐る恐る指差し、その質問の答えを示した。
「へ?私?」
「……はい」
どうしよう、言ってしまった。
檜山、気持ちを勝手に言ってごめん。
あぁ、杏璃さんもこの流れでそんなこと言われて絶対気まずいよね。
不穏な空気が流れるのを想像し、息苦しさを感じた。
ところが、そんな想像も彼女の笑い声で吹き飛ぶ。
「あはは、ないですよ!それはない!絶対ないです!」
それは予想外にもほどがあるほどの笑顔と笑い声。
謙遜しているのではなく、『本当にない!』と疑いなく断言する。
「檜山さん私に対して超冷たい目向けるんですよ?たぶん呆れてるんですけど。性格的に真逆だから合わないんだと思います」
冷たい目?呆れてる?
確かに杏璃さんの明るい性格と檜山の冷静な性格では真逆だ。むしろ檜山はにぎやかな人は苦手だとも思う。
でも、それでも……。



