一途な彼にとろとろに愛育されてます




「別に、なにもないですけど……」



そう言いかけたその時、休憩室の入り口からひとりの女性がひょこっと姿を現した。



「あっ、いたいた。玲央さん」



『玲央さん』、と立花社長を下の名前で呼ぶのは、昨日檜山と話していたあの彼女だ。

杏璃さん、だっけ。

彼女はひらひらと手を振り、かわいらしい笑顔でこちらへ近づいてきた。



「杏璃。どうした?今日は友達と食事に来たんじゃなかったのか?」

「それが友達が急用で来られなくなっちゃって。ひとりで食べてもつまらないので、玲央さんか檜山さんとご飯食べられたらと思って館内探してたんです」



白いレースのブラウスに、カーディガンを合わせた彼女は今日もふわふわとした雰囲気を漂わせている。

立花社長とも仲良さそうということは、このホテルの関係者?

あ、もしかして立花社長の妹とか、イトコとかかな。



「悪いが俺はまだ仕事がある。檜山も出てるし……あ、長嶺。せっかくだしふたりで食事してくればいい」

「へ?私ですか?」

「あぁ。食事代は俺が持つから、杏璃と食事がてら女子同士話でもしてくればいい」


突然自分に振られた話題にキョトンとしてしまう。

けれどそれは、社長かつ男性である自分よりかは杏璃さんのほうが話しやすいだろう、という立花社長の気遣いに見えた。