「あっ、立花社長と檜山くん。おはようございまーす」
見ると正面から歩いてくるのは、今日も細身のスーツがよく決まっている立花社長。それと、その後ろを歩く檜山の姿だ。
「おはよう。長嶺もおはよう」
気まずい、けど社長の方だけを見て挨拶をすれば大丈夫。これから先もずっと逃げてはいられないし。
そう思い顔を上げる、けれど立花社長と目が合うより先に、その後ろの檜山と目が合ってしまった。
まっすぐにこちらを見る檜山に、私はつい目をそらす。
「……おはよう、ございます」
そしてそれだけを言うと、そっけなくその場を後にした。
逃げてはいられない、なんて思ったばかりなのに。
臆病なままの私は、結局逃げてばかりだ。



