すると私は、そのまま自分の部屋へ駆け込み、思い切りドアを閉めると鍵をかけた。
「おい、ミネコ!」
リビングからは、檜山が名前を呼ぶ声が響く。
けれど、先ほど彼女を『杏璃さん』と呼んでいた彼から呼ばれるあだ名が、余計に悲しくさせるだけだった。
私ひとりの片想いだなんて、分かってた。
だけど、少しだけ。ほんの少しはって期待をしていた自分もいて。
恥ずかしくて、悲しい。
苦しさからこぼれる涙に、枕に顔をうずめて声を押し殺した。
それから私は一晩中部屋にこもり、檜山と顔を合わせることはなかった。
翌朝起きると檜山はすでにおらず、私もいつも通り支度をして職場へ向かった。
「おはよう、長嶺さん……ってあれ、どうしたの。目元腫れてる」
「あはは、ちょっと夜更かししちゃって」
「もう、ダメじゃーん。あ、いいコンシーラー貸してあげる」
出勤早々、廊下で会った先輩に目元の腫れにすぐ気付かれてしまったけれど、笑って誤魔化した。
やっぱり腫れちゃってる、か。ちゃんとメイクで隠してきたつもりだったけど。
この分じゃ瑠璃とは会った瞬間にバレるな。
なるべくいつも通り、周りに気付かれないようにしなくちゃ。
そう自分に言い聞かせていると、先輩は「あっ」と嬉しそうな声を出す。



