そのまま、沈んだ気持ちを無理矢理持ち直し、一日仕事をなんとか乗り切った。
けれどなにをしても、ふとした瞬間に今朝の檜山と女性の光景が思い出されて、また気持ちが落ち込んでしまう。
その日の夜。リビングのソファでぼんやりとテレビを見ていると、突然頬にひんやりとした感触が伝った。
「ひゃっ!?」
驚き思わず大きな声をあげながら顔を上げると、目の前にはビールの缶を両手に持った檜山がいた。
「ひ、檜山」
「さっきから呼んでんのに無視するから」
「へ!?あ、ごめん……」
まったく気付かなかった。
反応のない私に押し当てたのだろう、缶ビールを一本受け取るとよく冷えていた。
檜山は自分の分のビールを開けながら私のとなりに腰を降ろす。
ほんの少し開けられた距離を感じながら、私も缶のプルタブに指をかける。
「なにかあった?」
プシュ、と缶が開く音と同時に、檜山がたずねた。
その問いに、一度躊躇い、勇気を出して口を開く。
「今日、かわいい人と喋ってたね」
「え?あぁ、杏璃さんか」
杏璃さんっていうんだ……。
檜山が女性を名前で呼ぶことがまた珍しくて、特別を感じさせてまた胸が痛む。
手にしていた缶をそっとテーブルの上に置いた。



