「本気で好きだったら周りの誰に反対されても関係ない。なにがあっても、なにを言われても、絶対に離さない」
それは、もしもの話をしているにすぎない。
けれど目を見て言われると、まるで自分に言われているかのような錯覚をしてしまい、胸が強くときめきを感じた。
気づけばすっかり止まった涙に、檜山は私からそっと手を離す。
「俺も風呂入るから、お前先寝てろ。ベッド使っていいから」
「えっ、でも檜山は?」
「俺はソファでいい」
檜山が目で指す先には、ふたりがけ用の横長いソファがある。
確かに寝られなくはないけれど、身長の高い檜山の体型では絶対狭いと思う。
「絶対体痛くなるじゃん。私ソファ使うよ」
「いいって。お前しょっちゅうベッドから落ちてるくらい寝相悪いんだから、ソファとか無理だろ」
「悪かったわね寝相悪くて!」
確かによく落ちてるけど!
けど、でも、と続けようとした言葉を遮るように、檜山は突然私の額に小さくキスをする。
額に触れた薄い唇の感触に、驚き、照れ、瞬く間に頬から耳まで熱くなるのを感じた。
そんな私を見て檜山はおかしそうに笑うと、
「おやすみ」
そう言ってバスルームのほうへ向かって行った。
……うまく丸め込まれた。
どうしていつも、結局こうして檜山に甘やかされてしまうんだろう。
今日もこうして、愛しさが募っていく。