散々かわいげのない態度ばかりをした私にも、檜山は変わらず優しさをくれる。
そんな彼に、私もたまには素直に向き合いたいと思うから。勇気を出して口を開いた。
「……愛菜さんのこと、まだ好きだったりする?」
ぼそ、とたずねたひと言に、檜山は驚き、小さく笑って首を横に振った。
「正直、全く」
「え?」
ま、全く?
予想外のその答えに、拍子抜けしながらも言葉の続きを待つ。
「確かに、別れた理由の中に、あいつの親がいい顔しなかったっていうのもある。向こうの親にもそれなりに思惑や計画もあったみたいだから」
「うん、神崎グループの社長令嬢だもん。きっと、いろいろあるよね」
「あぁ。けど別れた理由はそれだけじゃない。気持ちや意見ですれ違うことも多かったから。だから、それがなくてもたぶん終わってた」
そう言い切る檜山の表情は落ち着いており、嘘や言い訳には全く見えない。たぶん、本心なのだと思う。
そう、だったんだ……。
親がとかはあくまで理由のひとつ。檜山と愛菜さんは、ちゃんと理由を持ったうえで別れていたんだ。
よかった、と安堵する私に、檜山は「それに」と言葉を付け足す。