髪も体も洗い終え、すっかり温まった体をバスローブで包みリビングルームに出る。
するとそこでは、スーツのジャケットとベストを脱いだ檜山がちょうど電話を終えたところだった。
立花社長に連絡してたのかな。
「……お風呂、ありがと。立花社長のほうは大丈夫?」
「あぁ。『うまく誤魔化しておいた』ってさ」
檜山はスマートフォンをテーブルに伏せるように置くと、こちらへ近づいてくる。
そして私の目の前に立つと、乾かしたての髪をそっとすくって顔を近づけた。
「ワインの匂い、ようやく取れたな」
不意打ちのその仕草に胸がドキ、と音を立てる。
けれどその時、目の前の檜山のワイシャツについた汚れが目に入った。
ワイシャツの襟元ににじむ、ワインの赤いシミ。
やっぱり、汚れちゃってる。
そっと伸ばした指先で、乾いたシミをそっと撫でた。
「ん?そこも汚れてたか。上着はクリーニング出したんだけど、シャツは気付かなかったな」
「……ごめん。私のせいで、スーツ汚しちゃって」
「いいって。スーツはクリーニングでどうにかなるし、最悪買い直せばいい」
決して私を責めることなく、優しい言葉で頭を撫でた。
そうやってまた甘やかすから、弱くなってしまう。
先ほどまで人前では堪えていた涙が、我慢できずにこぼれだした。



