「もちろん大切よ。だから彼に不釣り合いな女にそばにいてほしくないの」
「不釣り合い……」
「匠はちょっと不器用だけど、本当は優しくて誠実で……付き合ってる時もすごく大切にしてくれたわ。そんないい人だから、幸せになってほしいの」
『不釣り合い』、『付き合ってる時』、聞きたくない言葉が次々と発せられる。
「……あなたにだから教えてあげるけど、彼、キスもそれ以上も紳士的で最高なの」
愛菜さんがクス、と笑って囁くその言葉に、目の前が暗くなる気がした。
聞きたくない。
恋人同士の間にあって当たり前のこと。だけど、知りたくないよ。
それ以上の言葉から逃げるように、私はその場を去ろうと歩き出す。
ところが、私が一歩踏み出した先にはワイングラスを手にした男性がおり、こちらへ向かってきていた彼と私は思い切りぶつかってしまった。
ドン、と思い切りぶつかり、その場に尻餅をつく。
「きゃっ……」
痛い、と声をあげようとしたその次の瞬間、頭にバシャッとなにかがかかる。
見るとそれは、男性が手にしていたグラスに入っていたワインだ。
ぶつかった衝撃でこぼれた赤ワインは私の頭から顔、ドレスの胸元を赤く汚した。
その騒ぎに、周囲の視線が一気にこちらに集中する。



