「ちょっと目離したらすぐどこかフラフラ行っちゃうの悪い癖よね」
そう言って、困ったようにふふと笑いながら愛菜さんは檜山のネクタイを軽く直してみせた。
そんな他愛もない言葉の端々から、ふたりの長年の仲や関係の深さを思い知らされ胸が痛んだ。
「向こうで『立花社長にご挨拶したい』って方がいるわよ」
「いや、今は……」
「行ってくれば。大事な仕事なんだから」
私の方を気にかける檜山に、私はかわいげのない態度のまま、そっけなく突っぱねる。
そんな態度にもう今はなにを言っても無理だと察したのか、檜山は苦い表情で、愛菜さんが手で示す先にいる人の元へ向かって行った。
……さすがに今の言い方はかわいげがなさすぎたかも。
遠くなる背中を見つめ、罪悪感が込み上げる。
でも笑って流すなんて無理だよ。
その胸に他の人の面影があるかもしれない、なんて思ったら。強い嫉妬が込み上げてしまう。
その感情を必死に押し殺していると、隣に残っていた愛菜さんが口を開いた。



