「ミネコ、ここにいたのか」
すると、名前を呼んだのは、探しに来たらしい檜山だった。
この広い会場の中、わざわざ探しに来てくれたのかな。
そう思うとちょっと嬉しいけれど、その気持ちを飲み込んで、私はそっけなく顔を外に背ける。
「なによ。元カノはほっといていいわけ?」
わざわざ『元カノ』というワードを出しながらチクチクと刺すように言う。
その言葉に檜山は、「社長から聞いたのか」とバツの悪そうな顔をした。けれど、私のその態度に小さく笑う。
「なに、妬いてる?」
「妬いてませんけど。痛い勘違いやめてよね」
「痛いってお前なぁ……」
きつめな返しをすると、それにはさすがの檜山も少しムッとするような顔をした。
互いに黙り少し険悪なムードになったところに、カツカツとヒールの音がこちらへ向かってくるのが聞こえた。
「あ、いたいた。もう匠ってばここにいたの?」
そこに現れたのは、先ほど檜山を連れ去った愛菜さんだ。
彼女は長い指をした手をひらひらと振って小走りで近づいてくると、彼のスーツの袖を掴む。



