私の好きな人






物音一つしない空間


さらに時が止まったかのよう





フワッと香る香水と、密着する体の温もり



一瞬で、自分のものじゃない色々なものに包まれた






必死の抵抗も虚しく


ソノ時間は、少しの間つづいた











「ッッ…ッッ」

「……」



やっと解放され、距離が離れる




「……サイッテ‐…ッ」


必死に出した声は震えてた



「………」


小林くんは黙ったまま



「ホント…ッ大ッキライッッ」

「……ごめん」


そう謝った小林くんは


「………俺だってこんくらい必死だってこと分かって」


と続けた



「だからって…こんなの」

「彩月が藤を好きなように、俺も彩月が好きだ。この気持ち……お前なら分かるだろ…」

「……ッ」


火照った顔に混乱する頭

何も言えなかった




ただ




人を好きになる気持ち

一生懸命になる気持ち






それを理解した瞬間…………





視界がハッキリとした。






「私は……ッ良平が好き」

「………」

「私は……良平がいい…良平と…って…」





良平とこうなりたかった


良平の香りと温もりに


包まれたかった





ずっと………夢見てた






「………」

「………」





また静まり返る空間



私と小林くん以外 誰も居ない図書館




「……ごめん、帰る」

「おい」

「ッ触らないで!!」



掴まれそうになる腕を思いっきり振った



小林くんの方を見ず、必死で出口に向かう




「彩月!」



小林くんの声ははっきり聞こえる


けど足をとめず、駆け足で図書館を飛び出た




「……なんで…こんなこと」


図書館を出た瞬間、我慢していた涙が溢れる





私………怯えてる…





良平には言えなかった気持ちが


なんで小林くんの前では言えたの…






いつも真っ直ぐで

思ったことをすぐ言っちゃうし

思ったことをすぐ行動しちゃう



私にできない弱い部分を

小林くんは私にぶつける






良平に対する想いは

どんどんと大きくなって溢れてくるのに




どんどん自信が無くなって







私と真反対の小林くんに





刺激を受けていたのかもしれない






私………



怯えてる





私こそ………




一生懸命な小林くんに





なにか





怯えてる…………