「知ってる」
「え?」
「俺にも雨宮から連絡があったし」
「…そうなの?」
雨宮とは桜子のこと
桜子と良平も連絡先は交換してるから連絡があってもおかしくはない
今日は二人で水族館だよ…?
……知ってて良平は私を迎えに来た…?
ってことは
「早く行くぞ」
「…うんっ!」
心のモヤモヤは晴れ、空気が透き通った気がした
良平と二人でお出掛け
こんな日が来るなんて
やばい…泣きそう
心臓のドキドキと目頭が熱くなるのとで私は精一杯下を向く
落ち着け
落ち着け
「…何してんの?」
「へ…?」
「いや……後ろ座れば?」
「あ、そっか」
なんてこった
ろくに前も見ずスタスタと自分の自転車にまたがった瞬間、良平は少し呆れた表情だった
落ち着け
落ち着け
「乗った?」
「乗った!」
良平の背中に手を当て
自転車は颯爽と走り出した
良平の香りに包まれるような感覚に私は一気に幸せになる
思わず力が入り、良平のお腹まで手を回し密着した
「……」
良平は何も言わない
こんなに密着してるのに、いいのかな…
良平は何も思わない…が正解かもね
何を隠そう
ただの幼なじみだもん
けど、今日はそれで良い
良平との今日一日
楽しまなきゃ
私はまた良平のお腹に回す手に力を込めた
「ねぇ良平!」
「ん?」
「お土産何にしようか」
「もうお土産の話かよ」
「家族でしょ、桜子に、クラスの子…」
「はいはい、着いてから考えろ」
「はーい」
颯爽と走る自転車
振動と風の音に
緊張していた私の心臓は次第に心地よくなっていくのが分かった

