「ありがとうございました」
「お礼なんてやめてよ、俺が無理矢理乗せたんだから」
「無理矢理…って」
今は自宅前
高級車は自宅玄関の前で停まる
……目立って仕方ない
「お礼を言うのは俺の方」
「え…?」
「もう少し一緒にいたかったからさ、嫌がるって分かってたけど、つい無理矢理…ごめんね、ありがとう」
「…なに言って」
車から降りようとするタイミングのままの私は、小林くんのストレートの言葉にうろたえる
……どう対応すればいい?
どういう表情が正解?
小林くんといると、いつも調子狂う…
いつまでも慣れない……
そういえば告白……?かは分からないけど
付き合ってよ…って
ゆっくり考えて…って
確かに言ったよね?
けど、私の気持ちは決まって1人しかいない
とくにゆっくり考えてはないけど…今このタイミングで言うしかないか…
「あのっ」
「じゃ、またね」
「…っ?!…」
「え?なに?何か言おうとした?」
「あ、いや何でもない!」
タイミングまで…合わないとは
小林くんとの相性は最悪です
閉まった後部座席のドアの窓からヒラヒラと手を振る小林くん
小さく振り返すと車はゆっくりと動き出し、あっという間に見えなくなった
呆然と玄関の前で立ち尽くす
人は思考の限界が来ると、無になるらしい
小林くん、まさか社長の息子だったなんて
車で送迎、しかも執事付き
お坊ちゃま…だった
「あ…そういえば…」
私は、ふと思い出した
小林くんが図書館に戻ってきた時、忘れもので戻ってきてたはず…
その時に電車がどうの…って言ってたはず
……あれ、嘘?
送迎車来てるんだから、電車なんか関係ないし
でも確かに言ってたような
…なんで…

