「彩月」
……?
ちょうど席を立って荷物を持った時、名前を呼ばれ振り向いた
ザワザワ…
……ザワザワ…
教室は一気に騒がしくなり、女子達の目線は一点集中している
「…え、良平?」
原因は分かった。
「帰るぞ」
「へ?」
「……」
なぜ良平が私の教室に?
しかも…「帰るぞ」って…
…初体験…
まるで…カップルみたい
たしかに自転車が直るまで良平が送迎してくれることになったけど
そんな教室にまで迎えにこなくても…
そりゃ嬉しいよ
めちゃくちゃ興奮してるよ
「おい、早くしろ」
「は、はい!」
慌ててカバンを持ち直して出口へと足早に歩く
「え…なに、付き合ってるの?」
「うそ…まじ?」
「幼馴染みって聞いたけど、まさか…」
「てか藤くん、お迎えとかチョー紳士!」
「えー、でもちょっとショック…」
「みんなの藤くん…」
……ほんとにすみません…っ
女子達の視線と合わないように下を向く
こうなるでしょーよ
なぜ、こんなこと…
良平らしくない
「とろい」
「…ごめん。てか教室まで来なくても校門でよかったのに」
「別に…通り道だから寄っただけ」
「通り道て…女子達の目線が…」
「目線?」
「何も感じないの?この熱気を」
「熱気ってなんだよ」
あなたのファンはこの学校に山ほどいるのですよ?
自覚なし……本当に困ります
「荷物貸して」
「え?はい…」
良平は自転車にまたがると、私の荷物をカゴの中へ入れた
「行くぞ」
「うん」
校門を出て、颯爽と進む自転車
落ちないように良平のお腹に腕を回した
良平は優しい
さりげなく出来る気遣い
ほんと素敵だなぁって思うんだ
前からの風がすごく心地いい
良平の匂いに包まれてる感覚になる
幸せだ…
思わず手にギュッと力が入った
良平は何も感じてない
きっとそう

