毎朝乗るこの満員電車には
何年経っても慣れない。

肩と肩が触れ合い
ドアが開く度になだれ込む
人の波は憂鬱な気分に拍車をかける。

ため息をついても仕方がないと
分かっていても、ため息しか
出ない私の腕を誰かが引っ張る。

気付いたら誰かの胸に
すっぽりと収まっていた。

恐る恐る顔をあげると御曹司が
笑みを浮かべていた。

望「電車の中でも要領悪いんだな。
何、真ん中に突っ立ってんだよ。」

希「何でいるんですか?」

望「会社行くだけだけど。」

希「部長も電車になんて
乗るんですね。
てっきり、高級車で
通勤してるのかと思いました。」

望「まあ、普段はね。」

満員電車の窮屈さに
イライラしているとというのに
御曹司は更に私をイライラさせた。