エスポワール~私と御曹司~


希「ひーくん。私ね、このお店が
好きなんだ。お客さんもひーくんも
久しぶりに戻った私の事を
家族みたいに受け入れてくれてさ。
このお店にいる人は皆、笑ってて
希ちゃんのために来たよって
暖簾くぐりながら言ってくれる
常連さんがいて、ひーくんの
美味しい賄いも付いてきて。
私、ここにいていいんだなって
ここでは少し役立てるなって
そう思えるんだよね。」

響「俺の賄いは余計だろ。」

希「ネガティブな事は
考えたくないけどさ
今の仕事、私にはもったいない位の
大企業で最近は少しずつ仕事にも
慣れてきて頑張ってるけど
時々ね、私はここにいていいのかな?って
思っちゃうんだよね。
それでも頑張れるのは、ある人が
続ける事に意味があるって
言ってくれたおかげなんだけど
やっぱり苦しくなるんだよ。
だからさ、私。ここにいたいんだ。
毎日楽しいって思えるこのお店で
働きたいんだ。」

ひーくんは立ち上がると
厨房へと向かった。

響「藍原。今日は予約が入ってるから
5番テーブルに12席用意しといて。
後、これからは絶対に無理はしない事。
これ、店長命令な!」

希「うん!」

言葉にせずともちゃんと伝わる。
ここにいていいよって
ひーくんが言ってくれた。