なかったことなんて、そんなことできるはずがない。



『先輩・・・。』



「ごめんな、困るよな。
俺たちは先輩後輩の関係だもんな。
瑠衣と舞っていう関係にはなれるはずがないよな。」



本当にごめん、送る。と先輩はステージから降りようとする。



『先輩!』



私の話を聞いて。



『先輩、私の好きな人知ってますか?』



「・・・俺の知ってる人なの?」



『はい。』



先輩が私の友達を知っている人はいない。



先輩は少しの間考えていたけど、分からないまま珍しく下を向いた。



『私の好きな人は先輩ですよ。』



「え?」



ばっと顔を上げた先輩の前に立つ。





だから、と付け足してバイクに乗ってた時のように、3度目は前から腕を回した。




『好きな人は瑠衣、だよ。』



恥ずかしくって顔を埋めると、香水の匂いだろうか甘酸っぱいレモンの香りがした。