お巡りさんの疑問符と言えば、路地裏に曲がる理由と、女の顔立ちだろう。そんな、声を漏らして仕舞うほどに、女の顔が、あたかも妖艶だったのだ。



そうして

「___ラージュ、逮捕だ」

お巡りさんとは別に、後方から声がした。

「動くな......、いいか?」

女は、最初こそ少し身構えたが、その後すぐに、力を抜いた。理由と言えば、女しか知らない。

「おや、久しぶりだね」

振り返りもせずに、甘い声__ではなく、少女のような少年のような、そんな声で淡々と繰り出された言葉。その声に一番驚いていたのは、お巡りさんだった。

「ケビン。その女は、お前の正体に気付いている」

カサ、と衣服の擦れる音がし、初めて、自身の背後の男が、フードを被っていたことに気付いた女。その証拠に、お巡りさんが

「ミ、ミアポップ巡査部長!」

と、声を上げた。


女は、やはり、と言わんげな笑みを浮かべ、どうしたと思う。





女は、一瞬のうちにお巡りさんの背後に回り込み、うなじに手刀を入れた。



「...、ぐ...っ!」

やがてお巡りさんはその場に崩れ込んだ。

「な...?!」


そのあまりにも速いスピードで事を成し終えた女に、男の部下であろう、周りにいた者たちが、感心を含めた声を漏らした。

が、それはあくまで男以外の者たちのことだ。

何故、男が、彼ら同様、声を漏らさなかったかと言えば、それは___




「大丈夫。彼はすぐに目を覚ますよ。...、君らの相手をし終わるまでに」