「ね、お巡りさん。どこか分かんないから、教えて?」

トドメとでも言わんげに、女はお巡りさんの腕に自分の腕を絡ませ、己の胸部をお巡りさんの腕に寄せた。これは、女がナイスバディであったため、悩殺必須な行動であった。案の定、お巡りさんの顔は緩んでいた。

「し、失敬な。銃を持っている者には、不用意に近付くんじゃないぞ」

厳かな注意としても聞き取れるだろうが、虚勢を剥げば、相手を想い、発した言葉だ。

「ありがとう、優しいね」

女は鼻近くまで、フードを被っていた。故に顔の露出部分といえば、口だけであった。優しいね、のところで、妖艶な笑みを浮かべた。

「......、ほら、早く行くぞ」

当たり前のことながらに、女の目的地はJHホテルではない。加えれば、ホテルへの道も熟知している。お巡りさんが歩き出して、早々。女は、ホテルへの道を外れ、路地裏に曲がろうとした。

「ん、なんだ?道はこっちだぞ」

もうそこにお巡りさんの強面はない。完全に、女に心を許し切っていた。
男など、こんなものだろうと静かに笑む。




と、女はここで、フードを取った。

「...、この路地裏、多分遠回りでしょ?」

「え......」

露(あらわ)になった女の顔は、見惚れる程だった。澄んだ黄金の瞳は、今宵の月のよう。カクン、と、60度くらいの程良い鼻は、筋が通っている。ふっくらとした血色の良い唇に、きめ細かく白い肌が映える。