「ちょっと行こうか」

朝子は私を連れ出すと
タッタと廊下を歩いていった

彼女、戸田朝子は
今私が最も仲の良い友人の一人であり、私達の中で中心的な存在である

そのサバサバした何者にも気圧されぬ物言いからか、男女を問わず多くの人に恐れられている
らしいが、
私からすればサッパリしてて
良い奴なんだけどなぁ〜と
日頃思っていた
しかし
いざこういう状況になると
誰にも勝る恐ろしさが
彼女にはあった



人通りの少ない特別教室の前で、
彼女は初めて振り返った

『言わずとも分かるでしょ』

という圧力

「ら、ラブレター…」
私は口を開く

「ふーん、で?笑」

人がこれ程までに笑った顔を
私は知らない
これ以上私に何を語らせようというのか…だってお前もう宛名見ただろうが………‼︎‼︎

宮本桃子一生の不覚である
こんな下衆な女にラブレターを拾われるなんて


数分後、結局、好きになり始めたところから、ラブレターを書いたところ、更には今日の朝の事のてんまつまできっかり喋らされた私は、もはやどうにでもなれという気分だった

「桃子、顔真っ赤だよ」

「お前のせいだ…!泣」

「ごめんごめん」
「こんな面白い、、じゃない、こんな大事なこと黙ってるから、ちょっと意地悪したくなっちゃってさ」

『あ、悪魔だ…!』

「その手紙渡してきてあげようか?」

「え…⁉︎」

「良いよ、そのくらいならやったげる」

「嘘⁉︎」

「なんで嘘つくん?本当。面白い話も聞かせてもらったしねぇ〜」

「ん〜!!」

「冗談、冗談笑、友達だから渡してきてあげても良いよって言ってんの」

持つべきものは朝子である
さっきまで心の中でボロクソ言っててごめん!

「お願い…しようかな…」

「ん、分かった」

「結構時間ヤバいんじゃない?」
「戻ろ!」
少し背の高い彼女の姿は
とても頼もしく見えた