キンコーンカンコーン

下倉先生が入ってくると

僅かな沈黙が流れ
自分が週番だと気付いた子が
少し慌てて号令をかけた

いつも通り
右の子は「おはよーございまーす」を
はっきり言ってて偉いなぁ〜と思う

左の子はその3分の1くらい
私は5分の1くらいだろうか
下倉先生はたまに
「挨拶は大事だぞ〜」なんて
声を掛けるけれど
大抵はクラスで平均してこのくらい声を出してればまぁサーフである。
私は右の子に心の中でありがとうを言いながら席に着いた。

椅子を引くガガガガガーっと言う音が止むと、先生が忘れかけた連絡事項をたらたらと喋り始めた。

そんな話どうでも良いよ

私はさっきから机の中が気になって仕方がない。あんな恥ずかしい物を持って1日過ごそうなんて、どうかしてしまいそうである。

気づくと朝のホームルームは終わっていて、朝子が横に来ていた

「あれ、なんだろうね」



柴田くんの机の上が
なんだか物凄いことになっている

高く積まれた大量の紙パックの山

先生はさっきのHRであれにツッコマなかったのだろうか

「全部牛乳みたいだけど…」
朝子が半笑いで言う

どうやら首謀者は村瀬君のようだ
柴田君から教室と廊下をぐるぐる逃げ回っていたが、すぐに捕まり柴田君のお仕置きが始まる

「いや、シバケンの為を思ったんだって!牛乳飲んだら白くて大きくなりそうだろ‼︎ ほら、シバケン黒くて小さいから!」

なぜ捕まったタイミングでそれを…!


「どうやら殺されたいようだな」

多分そうなのだろう


「よく毎朝飽きないよね笑笑」

男子全体は周辺に集まってワッキャしている

「うん楽しそう、真似できないけど笑」


「あ、
桃子さ英語のプリントやった?」

「ん?うん 突然だねw」

「見して!」

「良いけど…笑」

ここだっけな、
机からファイルを引き抜く


ふぁさっ


「 …‼︎ 」


何故あの時もっと
注意深く居られなかったのだろう
少し前までそのことで頭が一杯だったのに…一瞬の気の緩み
それが命取りだった…
男子が無駄に面白い悪ふざけなんかす
るからである


「何これ…?」

少しかがんで朝子が拾う

あ、いや、その、、、

宛名を見る朝子

「あ、ごめん」

意外にもすぐ返してくれた

なんだ優しいじゃん朝子

心配なんてしなくてよかったなぁ……

朝子は万遍の笑みだった