好きな人がいる。
それは多分 今時の女子高生として
全然普通なことなんだけど、、、

ラ、ラブレターというのはどうなのだろう、現代人として……
恥ずかしくはないのか?
テレビとか漫画とか
そういう世界のものに
なってしまっているのではないか…?

電話もメールもある時代に、いや、、
もはやメールからLINEに
移り変わろうとしている時代に…!
恋文というのはどうなんだ、、、
どうなんだ、桃子‼︎
大正か!明治か‼︎という次元だよ
まったく、、

うわぁぁ〜〜恥ずかしい‼︎‼︎‼︎
今更恥ずかしくなってきてしまった…

でも、しょうがないと思うのだ私は
だって、電話やLINEで告白するのってなんか軽薄だって言われそうだし、
昨日のテレビでイノくんもそう言ってた気がするし、、

そりゃまぁ
直接言えればそれが一番良いのは分かってるけど…

いつ声かけろっていうのだ!
なんて声かければ…
友達に声掛けて貰う⁇
いやいやいや、それでも直とか
絶対無理だから!!!

とか、もんもんと考えてるうちに
書いてしまったのだ、。
書き上がってしまったのだ。
こうなったらもう

しょうがない

渡すしかない!

覚悟を決めるのよ‼︎ 桃子‼︎‼︎



と思って来たけど、
6時半…
さすがに早く来過ぎたかも…
ガチャガチャ
…玄関開いてないし

どうしよっかな、


二階の玄関前には朝日が差し込み
所々の端っこ達がぴかぴか光る
勢いよく階段を上がった所為もあって
心臓がドクドクと脈打っていた
できれば早く千田君の下駄箱に
"これ"入れちゃいたいんだけどな…

まぁ急がなくても、こんな早く誰も来ないとは思うけど

ガーっと先生の車が
駐車場に入るのが見える
あ、職員玄関なら開いてるじゃん!

小走りに階段を駆け下りて行く
首筋にかいたばかりのわずかな汗が
すーっと駆けて気持ちがいい

先生にかるく会釈をしながら
職員玄関から入ると
いつもの校舎とは違う
不思議な静けさがそこには
あるように思えた

急げっ!意味もなく走る
ドクドクッ 、ドクドクッ、って
身体の中から急かされるのだ

熱い熱い
あの曲がり角を曲がれば玄関である
キューっと ブレーキ コーナリング

ガラス越しにさっきまで居た
玄関の向こう側が見える


筈が…


待て待て待て!
いや、実際 見えてはいるんだけど…
明らかに さっきまでとは違う風景
男男男男男男男男男男男男男男男男で
人口密度が物凄いことになっている‼︎

なんの祭りだろう……

あっ!

千田君も居るっ‼︎‼︎
無意識に近づく

ドンドンドン!!ドンドンドン!
ドアが恐ろしく叩かれる
っ!?

「宮本さーん!ここ開けてー!」

名前なんだったっけ、あの人…
同じクラスのナントカ君が
ガラス越しに叫ぶ

えっ…
…勝手に開けちゃっていいのかな

ドアの向こうではわんやわんやと
人の塊がウネウネ動いていて
一番前の人達は定期的に
ギュギュッとガラス戸に
押し付けられる

その下の方に
千田君を見つける
『 お ね が い 』
千田君が片手で拝みながら
ゆっくりを口を動かしていくのが
見えた


よし、開けよう

かちゃ


ドドドドどぅおーー‼︎‼︎‼︎
喧騒が包む

私は5歩ぐらい後退
雪崩れ込むケダモノ達に
巻き込まれない様にするので
必死である…!
あんな軽い鍵で
よく閉じ込めておけたものだ

ダドダトだどだと と駆け抜けていく
群衆の中に、千田君の姿が一瞬
見えた気がして…

視線をやる
『 あ り が と ! 』
ってまた口が動くのが見えて

何だかニヤニヤしながら
走り去る背中を見ていた



あっ、ラブレターどうしよ