「帰ろうか」

ギターケースを持持ち上げて
彼が声をかける

「うん、そうだね」

夜の街のざわめきに後ろ髪を
引かれながら 私達は
駅の光の中に歩いた

はる君の顔がだんだん白くなって
いつもの知ってるやつになってくる

販売機で切符を買って、
改札を潜って、
ぬるい風のホームに出て、

電光掲示版を見ながら
すぐ来るねって笑いかけたら、
本当にすぐに来て、
二人は涼しい電車に逃げ込んだ

私達椅子取りは合戦だということに
もう遅いってタイミングで気づいて
まぁいっかって笑いあって
入り口近くに陣地を取った

すぐに電車は走り出す

がたんごとんと音がなる

少し向こうで学生の笑い声
まぁ私達もだけど

「どうだった?」
はる君に尋ねる

「楽しかったよ」
窓越しの彼は答えた

もう少し"はにかみ"が欲しい

ガタンゴトン

私には聞き返さないのね

ふっと下にやっていた視線を
私に向ける

綺麗な目だ

奴らも言ってたけどやはり
整っている顔である
モテるかどうかは顔じゃないんだなぁと、、。
いや、モテてるか知らんけども…

「二川さん歌、上手かったね」
また少し視線を外してから 云う

「あ、ありがとうございます」笑

ガタンゴトン

「また行く時あったら、来る?」

「うん、行きたいかな」

「歌 作ろうか、
二川さんが歌う用の奴」

…なんか大胆じゃね?!
知らぬ間に落としたか…この男
我ながら驚きのフェロモンの質!!
短時間で確実に仕留めたな

「え、、なんかすごいね笑」
「私には勿体無いよ」笑笑

「そんなことないと思うけど」
涼しい顔は変わらない

「私リア充になりたいんだよね」

「ん?」

あ、やっとこっち見た

「あーリア充って言っても、
恋愛とかだけじゃ無くてさ、、
スケジュールをやりたい事でパンパンに埋めてる人とか、
毎日の生活にこう!ハリがある人!」

バックをあさる

「で、、このノートに書き込むの!」

「…部活ノート?」

「そう!女バスの‼︎
このノートをキラキラした思い出で
一杯にして、私の選択は間違ってなかったって、私は誰よりも青春を謳歌したんだって、見せつけてやるの!!

心の中でだけど…笑」

「なにそれ…笑

めっちゃ未練あるね笑笑」

あ、表情変わった…

「…よくわかんないんだよ

自分でも、、どうしたいのか 」

「だからさ、、次も誘って!

取り敢えずスケジュール埋めたいの‼︎

「分かった」笑

また彼が笑った


ー続く