「次はつくった歌
歌おうかな…」

「おぉ!そんなんまで出来るの?」

「…うん」


二川さんは両膝に手をぽんとのせて
お行儀よく座った様な素振りを見せると

「聴きたい聴きたい」

と少し前屈みに

僕の方に顔を近づけて少し微笑んだ

まっすぐな目が

瞬間的に僕を少し緊張感させて

その後ゆっくりと
…高揚させた

「」

僕は曲名をぼそっと呟いて、
もうちょっとはっきり言ったらよかったかな…と少し思った

次のコードを考えなくても、
指が勝手に進んでいく

そんな風なら良いのだけれど

そうもいかずに

観客の居ない、
騒がしい、通行人ばかりの通りに
つい気をとられて僕のギターは
途切れ途切れだ




ぽーと鳴った昼のおと

まばらな模様

たいくつな昼休み

誰かが言う
「みんな帰ってこないね」って

単語のテストは及第点で

静かな僕らは取り残された

最後の一粒箸でさらったら

この教室から


四角い部屋 右の隅

廊下側の後ろから二番目

ドアから隙間風

みんなの影絵と白い机

アウトラインの向こうに空

窓をみたってどこへも行けない

廊下に出たって

なにができるわけでもないし

でも、目をつぶれば


きっちりしたものいらない

しっかりしたひときらい

てきとうでいれたら

四角い部屋はとろみを増す

どろりどろりと溶けていく

校舎につたった教室が

地面について



微睡んだらいい

雀の声




ちょっと優しい
昨日の僕

ちょっと真面目な
おとといの僕

誰かのことなんて考える余裕はなくて

でも誰かに
優しいって思われる僕

正しいって思われる僕が良かったなぁ


ちょっと気を遣ったんです

ちょっと誰かの為を思った気がしたんです

でも、もしかしたら

って気もしたんです

あーあーあーあー赤っ恥

何かを気にしたその1秒から

みんな
針の様に見えます

廊下を走った
昨日

細い道を帰る
今日

あーあーあーあー赤っ恥

昼間の空はそこにあるだけ全部

あーあ

かっこ良くなりたい 」

歌い終えた僕は

ギターを置いて、、

帰ろうか?と笑った