特にギターが好きというわけではない
ただ、昔から曲を作ってみたくて、お父さんの会社の人が要らなくなって譲ってくれるというので貰った

小学生の終わりぐらいから
ずっと歌手になりたいとか
のたまってたくせに
何にもしてこなかったから
これを機会に頑張ってみようって
練習して、曲を作って

どこかに弾きに行かなくちゃって
家を飛び出したら
このざまである

放課後の微妙な時間
帰宅組みはもう帰り
部活組みはまだ帰らない
電車も割と空いてたのに…
まぁそりゃ居るよなぁ
めっちゃ学校近い駅から
乗っちゃったし

でも、無視したら
もう普通 諦めるじゃん!
あ…ごめんってなるじゃん!

しぶといわ!
ほっといてよ
こっちだって恥ずかしいの分かってて
ギター持って来てんだよ!
不安でいっぱいなんだよ!

でも、このままじゃずっと
思ってるだけになっちゃうから
なんとかここまで来たのに

最初からハードル高いわ!
よりによって一番
口が早そうな人に…
嘘でしょ

てか、路上の弾き語りが
歌も演奏もしない人
横に連れてるとか
絶対おかしいでしょ!
かっこつかないでしょ!
分かれよ!
言えないけどぉ!




「ねーはる君!」

「え、?ごめん…何が?」
全然ついていけない
なんの脈絡もないように感じたのは
僕せいだろうか…
こういうタイプ苦手だ
よく分からないのだ
住んでる世界が違う感じ
見えてるものとか
聞いてるものとか
噛み合う感じがしない

昔から
こういうガツガツした子に
すぐ捕まるのだ
無駄に気に入られるし
長いし


「ううん。一緒に連れてって話!」
たがら…勘弁してください




「あ…いや、来てもつまんないと思うよ」

「それは、私が決めるもん。」
何言ってんだ

「つまんなかったら帰るよ。てか、他探す?」
ほんと、何言ってんだあんた

「……。一人で行きたいかな」
シンプルにいこう

「うーん。二人の方が良いよ!」
何を根拠に??

「え?」

「ね!」



「あ、うん…」

「やった決まり!」

彼女のいつもクラスで見かける
笑顔がそこにあった