カララン
ストーローを回すと
氷が涼しい音を立てた

おしゃれな店内には
まばらに人が座っていて
互いのテーブルの話の内容がギリギリ
分からないくらいの話し声が
なんだか大人な雰囲気を
醸し出している

「じゃあ、二川さん女バス辞めちゃったってこと?」
彼が再び口を開く

「うん…理由はよく分かんないんだけどね」
私は少し目を伏せ気味にして
また彼のコップに目をやる

アイスコーヒーの入ったコップには
びっしりと水滴が纏わりついていて

二つの雫が一つになって
つー…とコップをつたって落ちていく
いくつもの雫を巻き込みながら
まっすぐつーーと落ちていく

「まぁ、女バス厳しそうだもんな、
練習。顧問も、滋賀谷だし。」
「滋賀谷 雄三郎とか、最初聞いた時吹き出しそうになったけど。」

あっ、手が

雫をさらう…

ずー…と、幸也君はコーヒーを吸う

ごくっと喉仏が
引っ込んではまた戻ってくる
気持ちの良い喉越しが
こっちにまで伝わってきそう

「まぁね、実際厳しいけどさ。
それは今更じゃない?もう一年半やって来たんだし、、」
「最初からある程度分かってた事じゃん。」

「まぁ、笑美はそういうの知ってて入ってきたかもしんないけど、
皆んなが皆んなって訳でも無いだろうし、
そういう不満が溜まり溜まってってのもあるかもしんないしね。」

「まぁねぇ…」
「みずほ、そういうタイプだと思えないんどなぁ」
「私なんかよりも、人にガンガンいけるタイプだし、」

「俺二川さんと、全然交流なかったからなぁ、笑美は二川さんと仲良かったんじゃないの?」

「まぁ、ウチの部活って皆んながみんなと仲良いって感じだしね。人数も2年全部で10人位だし、」


「先生怖いとまとまんのかもね」

「それはあるね」
「で、これからどうする?
めっちゃ話変わるけど笑笑」

「うーん、あんま決めてないけど
駅前でもぶらぶらする?」
「せっかく、ここまで来たし
ここまでっても5駅?6駅?くらいだけど」

「そだね笑、そうしよ!」

私達は結構まだ残っていたアイスコーヒーを限界まですすってから、駅中のカフェを出た。


「なんか遊び行くの久々だよね」

前行ったのいつだっただろう
もう思い出せないくらい
ちょっとだけ
もう無いかと思ってた
まぁ付き合ってからずっとそんな感じだし
LINEばっかしの関係
楽でいいけど
それはそれで楽しいし

「それに目的もなくブラブラなんて初??」

「そだね、いつもどっか行こっつって誘うもんな。」

どこかで聞いた事がある様な言葉
目的が
場所なのか、人なのか
それがデートかどうかの
判断基準だって話

じゃあ、これが初デートかな




私達の田舎ではここ周辺が一番栄えた駅前なんだけど、ちょっと気を抜けばすぐ田舎に引き戻されそうで
そうならない様に私達は駅にひっつくみたいに歩いた


けど

あれいつの間にか
同じ景色

「結局、帰って来ちゃったね」
彼が言う

ちょっと前まで良い感じだったのに


「もう一周した?駅の近く周りすぎだよ笑」彼に笑う

「いや、駅ビルが一番楽しいかな〜て笑」

なんだろ、なんか
もっと楽しまなきゃって

…焦る

「じゃあ、入ってみる〜?」
首をちょっと斜めに

「入ってみる〜って笑笑
まぁ良く知ってるけどね、こんなとこ笑」
「そいえば聞いたことある?どこからがデートなのかってやつ?」

「あっそれさっき思った。笑」
駅の構内から自動ドアを抜けて
華やかな明かりの
駅ビルへと入っていく

そこかしこのお店が
華やかな洋服を並べていて
一つ扉を抜けただけなのに
無機質な駅から
華やかなデパートへ

暖かな光が溢れてて
どの服も平等に照らす
まるで影を隠すみたいに
裏側からもまた明かり
店と通路を隔てるガラスが白く
光を跳ね返して、きらきら光る
どっからきてるんだろ…
ちょっと見上げてみたりして


少し歩が遅くなった私に
「なんか、買いたい物とかある?」
と彼が振り向く


「うーん、今あんま無いかな 幸也君は?」

「うー…俺も特に買いたいってわけじゃ無いけど、、じゃあCDでも見る?」

「あーあれ?CDってここ売ってるんだっけ?」

「えっ、あ、違うビルかも」

「そっちいく?」

「いや、そこまでじゃねぇかな」
「雑貨とかは?あったよね上の階に」

「あ、良いね!あったと思う。3階?かな 」


エレベーターはゆっくりと
私達を押し上げた