「それにしても、どうしてそうなったのですか?
 ひとりで留守番ができないほど子供でもないでしょうに」

パーティで会った藤原飛香を思い浮かべてみたが、仮に幼さがあったとしても紛れもなく成人した女性である。

「なんでもあの娘は、二年前、事故で過去の記憶が曖昧になったとかなんとか」

「え? 記憶喪失ですか?」

「詳しいことはわからない。今は普通の生活に支障はないらしいが、長時間のフライトも心配だし、ひとりきりにさせるのも心配だということだそうだ」

ようやく合点がいったように、鈴木はゆっくりと頷いた。

「それが、碧斗が言っていた『あの子は特別』ということですか」