「もしかするともう少し長くなるかもしれない」
「妹さんだけ、ですか?」
頷いた西園寺洸は、夕べの母との会話を再現してみせた。
『碧斗の妹がどうしてうちに?』

『ひとりきりなのよ?可愛そうじゃない。なによ、気にいらないの?』

正直言えばその通り。

『他人がずっと家にいるのは落ち着かない。それに随分急じゃないか』

『なに言ってるの。言おうにもあなたはずっといなかったでしょ。そもそもほとんど家に帰ってこないし、いても自分の部屋に籠るんだから関係ないじゃない』

母の言い分にも一理ある。
実際、一週間のうちで洸が邸に帰るのは多くても半分くらいだった。

仕事で帰りが遅い時は、一分でも長く休めるようオフィスに近いマンションに向かうので、週末しか邸に帰らないということも多い。
仮に邸に帰ったとしても、ゆっくり母の話し相手になることも少なかった。

そんなこともあって、普段から友人たちの娘を引き合いに、私も娘がほしかったと口癖のように言う母である。

うきうきしながらゲストルームの模様替えをしただろう母の姿を想像して、洸はため息をついた。