仕事が順調に片付き、西園寺洸と彼の秘書鈴木は夕方六時にオフィスを出た。
明るいうちに家路につくのは久しぶりである。

会社に近いマンションに泊まることが多い洸も、見上げる空の明るさに微かな感動を覚えながら、今日は邸に帰ることにした。

「君も乗っていったら?」

鈴木の住むマンションは西園寺邸に向かう途中にある。

「ありがとうございます。そうさせて頂きます」

リムジンは静かに走り出す。

「今日から二週間、碧斗の妹がうちにいるそうだ」

「碧斗の妹というと、飛香さんですか?」

「そう」

西園寺洸が全幅の信頼を置くだけあって、あらかたのことは予想の範囲内である鈴木にも突拍子もない話だったのだろう。

「二週間?」

聞こえていないわけではないが、聞き返さずにはいられなかった。