見合いの報告をアラキにはしなければならないし、日曜には飛香を迎えに来る碧斗も来る。

――いずれにしても、土曜は邸に帰ろう。

「お疲れ」と、運転手をねぎらいマンションに入る。

誰にも会うことなくエレベーターを昇り、ドアを開けると同時にそこかしこでダウンライトの明かりが薄く点く。
暗く静まり返ったこの部屋で、このオレンジ色の光りに出迎えられるこの瞬間が、洸は好きだった。

真っすぐ窓辺に向かい、外を見下ろす。
星のように煌めく街の灯り。この美しい景色だけは、邸では味わうことができない。

ふと、飛香に見せてあげたいと思った。