扇で仰いでいれば観客席に着く頃には涙も乾き、この心乱れも落ち着くだろう。そう思いながら、飛香は一歩前に踏み出した。
なのに、洸は動かない。
「少し暑いけど、あの四阿(あずまや)に行こうか。木に囲まれて日陰だし、風が涼しいだろうから」
「え? あ、はい」
涙が乾くようせわしなく扇で顔を仰ぎながら、飛香は洸の後ろを歩いた。
暑さもあってか、向かう四阿に人はいない。少し離れた池のほとりで、はしゃぎながら写真を取り合う学生たちがいるだけだ。
学生たちは洸と飛香に気づくと突然静かになり、立ちすくんだまま二人を見つめた。
目を奪われるのも当然だろう。この雅な風景に、恐ろしいほど溶け込んでいる美しい二人連れが歩いているのだから。
なのに、洸は動かない。
「少し暑いけど、あの四阿(あずまや)に行こうか。木に囲まれて日陰だし、風が涼しいだろうから」
「え? あ、はい」
涙が乾くようせわしなく扇で顔を仰ぎながら、飛香は洸の後ろを歩いた。
暑さもあってか、向かう四阿に人はいない。少し離れた池のほとりで、はしゃぎながら写真を取り合う学生たちがいるだけだ。
学生たちは洸と飛香に気づくと突然静かになり、立ちすくんだまま二人を見つめた。
目を奪われるのも当然だろう。この雅な風景に、恐ろしいほど溶け込んでいる美しい二人連れが歩いているのだから。



