アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~

「音がでるほど?」

「はい。失礼ですよね、その人にも私にも」

「なんなんだ?それは。あいつの言うことは相変わらず意味不明だな」

クスクスと笑いながら飛香は思った。兄の言うとおりかもしれないと。

記憶喪失を無条件に信じて、余計な詮索もしない。ただ毎日が平和に過ごせれば満足してくれそうな、そんな人なら秘密を明かす必要もないだろう。
平安の都の思い出を胸に隠したまま、穏やかなで幸せに暮らせるのかもしれない。

でも、勘のいい人はだめだ。

――たとえば……。

隣をちらりと見上げて思った。

少なくともこの人のように鋭い人には、秘密を隠し通せないだろう。

正直に話すという手もある。だが普通に考えて信じるだろうか。