正直まだ、心は揺れ動かない。

その方法しかなかったとしても
やっぱりスズを意図的に
傷付けるのは気が引けた。

聖夜や三谷さんの言う通り
何も方法は思い付かないけど
そこまでしてスズを
手に入れるべきなのか
俺は悩んでいた。

多田「...諦めないで下さい。」

李人「え?」

多田「大丈夫です。
大切な人に傷付けられたとしても
大切な人がそこにいてくれれば
いつの間にか傷は癒えます。
何よりも大切な事は
傷付けない事じゃないです。
そばにいる事です。」

だけど、俺たちの話をずっと
聞いていた多田さんが涙を流しながら
そう語った瞬間に、俺は初めて
大切なものに気付く事が出来た。