僅か30センチの恋


李人「スズ。誕生日おめでとう。」

その箱を一向にスズは受け取らない。
そればかりか、止まっていたはずの
涙をまた流し始めた。

涼美「リトのバカ。」

俯きながら俺の胸のあたりを強く叩く。

ああ、やっぱりちゃんと
願えばよかった。スズの幸せを。
スズの涙を見ると本気でそう思う。

肩を震わせるスズにジャケットを
かけるともう一度、バカと言った。

涼美「ごめん。」

李人「何で謝る?」

涼美「八つ当たり。」

李人「知ってる。
でも、今日は許す。
誕生日だから。」

スズは涙を拭うと俺の目を見つめた。