「…………え!?」

「…なっ!」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。島崎くんも同じだったようで、ぽかんとした顔になっていた。

「…クリアファイルだって、こいつの言う通り今すぐに届ける必要はなかったんだろうけど…どうしてもお前の動きが気になって、追いかけきちまった。島崎、お前のせいだぞ」

「あの、あの、山神さん…。…私のことが、す、好きって…??」

どういう意味の好き?冗談ですよね?
…と言ったら失礼になってしまうのだろうか。
島崎くんに「好きだ」と言われた時もふざけているのかと思ったけれど──まさかあの山神さんがこんなことを言うなんて…、なおさら信じられない。頭の整理がおいつかない。額に汗がにじむ。
島崎くんは再度山神さんを睨みつけた。

「こんなところでふざけたことを言うのはやめてください」

「俺も、こんなところで言うことではないってわかってるけど…でもふざけてるつもりはないよ。一人の女性としてこいつのことが好きなんだ」

「…僕は知っていますよ、あなたが彼女に『結婚願望がない』と言い放ったことを。彼女は普通に幸せな結婚をしたいと言っていました。そんな彼女を責任の取れない男に渡すことはできません。それとも、『結婚願望がない』というのは嘘ですか?」

「…こいつにそう言った時は確かに真実だった。結婚なんてしたくないって思ってたよ。ただ…その考えは変わった」

「…!?」

「年も年だし、責任取るつもりがなきゃ、好きだなんて言わない」

「また…いい加減なことを…」

「こいつを放っておけないから…ずっとそばで見守っていたいと思ったから」

「山神…さ…」

眉をしかめている島崎くんと、混乱しきっている私の顔を見て、山神さんは肩をすくめる。

「…突然こんなこと言って悪かった。打ち上げ気分をぶち壊してしまったな。…ま、とにかく俺としては二人で飲みにいくのはおすすめしない。あんた、男は狼なんだから、もっと警戒心を持てよ。それじゃ、俺はもう戻る」

私の返事を待たず、そう言って山神さんはくるっと背を向ける。

「山神さん!」

背中越しに手をひらひらさせて、山神さんは公園を出て行ってしまった。


「………」
「………」
残された私と島崎くんは、しばらく何も言葉を発することができなかった。
本当に、島崎くんに誘われていた私が気になってわざわざ追いかけて来たの?彼の告白は本当?いつ彼は私のことを好きになったの?
頭の中は、もうパンク寸前だった。