石田先輩は29歳、私の3つ年上の先輩だ。
華の独身で彼氏いない歴は3年。私も同じく彼氏いない歴3年なので、二人で彼氏いない同盟を組んでいる。
石田先輩は関西出身でノリが良く、面倒見も良くてとても頼れる先輩だ。
私が入社した当初から、私に教育係が別にいたにも関わらず何かと仕事のやり方を教えてくれて、とてもお世話になっている。
「これが合コンの相手ならよかったんですけどね…。普通に嫌でしょ、自転車で突っ込んでくる暴走機関車女なんて」
「あはは!自分でよく言うわね!」
「でも相手の顔を良く見てなかったけど、イケメンだった気はします…」
「いや、もう最高じゃん!最高だよそれは!」
興奮する石田先輩をよそに、
「そういう人はもう彼女がいるにきまってますよ、先輩方。冷静になってくださいね」と島崎くんが口をはさんできた。
「島崎、乙女の夢を壊すようなこと言わないの。あんたこそさっさと彼女作りなさい」
島崎くんは肩をすくめて見せた。
彼は一つ年下の後輩だ。少しクセのある明るい茶髪で、くりっとした目をしている“ゆるふわ”系の可愛い男の子だけれど、こんなふうにチクリと毒を吐く一面もある。
昨年からこの部署に配属になって、私が教育係として面倒を見ている。後輩の育成が初めてだった私は、試行錯誤しながら彼を一人前に育てようと頑張ってきた。
彼は要領がいいし、ちょっと教えたらすぐに自分のものにしてバリバリ仕事をこなす、かなり仕事の出来る後輩だ。
今では追い抜かれてるんじゃないかと思うこともあるけれど、彼は私を先輩として立ててくれるし、良い関係を築けていると思う。
「そんなことより、お二人の仕事が落ち着いている時に、トラブルにまみれた品田さんを励ます会でもやりません?僕も最近忙しくてお酒がご無沙汰だし、若手チームで飲みましょうよ」
島崎くんが気を遣ってそんな提案をしてくれる。けれど…。
「気持ちはありがたいけど、今の案件が落ち着くまでは厳しそう。今日もまったく仕事が進まなかったし…まだまだ残業の日々が続きそう」
「遥、あんまり無理しないでよ?疲れがミスの原因になってるかもしれないんだから」
「はい…。でもとりあえず、やれるところまではやります…」
二人に慰められてなんとか元気を取り戻した私は、夜9時過ぎまで残業してから帰宅した。
