しばらくすると、握りしめていたスマホがブルブルと震えて着信を告げた。

「え!?」

見ると山神さんが再度かけてきている。

(ご、誤タップだって言ったじゃない!何でかけなおしてくるのよ!?)

私は電話に出る勇気もなく、そのまま電話が切れるのを待つことにした。
(早く切ってよ…!)と祈りながら、ぎゅっと携帯電話を握りしめる。
そのまましばらく電話が鳴り続けたけれど、ようやく切れた。せいぜい1分程度の時間が恐ろしく長く感じられ、私はどっと疲れていた。額に嫌な汗をかいている。

「はぁー…」

私はもう誤タップしてしまわないように、すぐに着信履歴の画面を消した。
ショックのあまり涙は引っ込んだけど、まだしばらくは電車に乗ろうという気になれない。泣きすぎたせいでものすごく喉が渇いている。薄暗い公園の中でぼんやりと、不気味な白い光を放つ自販機で私はアイスカフェラテを買った。
(…ほんと、甘いカフェラテが似合う子供、よね。こんなことで泣き崩れるなんて)

そんなふうに思いながら再びベンチに座り、冷えたカフェラテをちびちび飲んでいると…。

「おい」

「……?」

目の前に人がやってきたので私は顔をあげた。そこにいたのは───

「………えっ?」

「あんた何やってんの」

「やややまがみさんっ!?」

痛いくらい首をあげて、その長身の男の顔を見た。仕事帰りと思われる山神さんは相変わらずの無表情で私を見下ろしていた。

「な、なんでここにっ??」

私はあわててハンカチで顔を隠しながらそう言った。こんなグチャグチャの顔は見せたくない。