振り返ると、帰ったはずの友人とうちの高校を代表する完璧すぎる男で有名な生徒会長が立っていた。
「あれ、二人こそ、先に帰ったはずじゃ」
バッと腕時計を見ると玄関を出てからもう十分近くたっていた
「この人が忘れ物したんですよ、おかげでこっちまで遅くなっていい迷惑です」
友人は生徒会長といるときだけ、どこか感じが違う気がする。
同じ傘に入る二人は、なんだか幸せそうで、さっき後ろから見えた先生の楽しそうな顔を思い出して泣きそうになる。
泣くのをこらえている顔なんて、不細工に決まっているから
「そっか、じゃあ私急がなきゃだから先行くね!また明日!」
まくし立てるように言って走り出す。
そのうち傘が邪魔になって、信号待ち、傘を閉じてまた走り出す。
びちょ濡れになりながら、考える
先生の楽しそうな横顔、出会って十年一度も見たことのない顔だった。
私には先生はそんな顔してくれなかったのに、どうして。
私は先生と一緒にいて、そんな顔にできなかったのに、私とサエコ先生は一体何が違ったんだろう。
一回りも年齢が違うからかな、
それとも私の頭がすっからかんだからかな、
それとも私の顔はサエコ先生みたいにかわいくないからかな。
あげ始めたらキリがなかった。
サエコ先生は前に先生の言っていた理想の女の人像にぴったり当てはまっていて、私はその逆で。
家について親の入った後、冷め切ってしまったぬるい浴槽に入りながら落ち込んだ
先生の好きな髪型はロング、私は男の子とかわらないショート
先生の好きな教科は数学と音楽、私が好きなのは先生が大嫌いな体育
先生の好きな女の人の性格はおっとりした優しい人、私は男勝りなきっつい性格
先生の好きな女の人の背は友人やサエコ先生のような小さめで、対して私は169センチ、先生との身長差はたったの7センチ
何もかも外れている。
もっとも先生の理想に近いサエコ先生に私が勝っている部分って一体どこだろう
体力、剣道、声の大きさ、気性の荒さ、身長
あと、
先生への想い。

