重なるてのひら ~ふれあう思い~

「だったら尋、目を瞑って。」

たぶん……キスをされる。

いつもみたいに、私からじゃないキス。

先生が、彼氏として……してくれるキス。

そう思うとドキドキが止まらなくなって………頬がピクピクしちゃう。

う~、恥ずかしい!

ギュッと目を固く閉じていたら

クスクス笑う先生が近づいて来て………

唇に冷たい感触が。

うん??

冷たい感触??

びっくりして目を開けると

「何を想像したの??尋のエッチ!」って。

えっ!

キスじゃなかったの??

恥ずかし~!

真っ赤になる私に

「お仕置きは……これくらいにして。
ご褒美もらうね。」って………チュッ。

えっ!えっ??キス!

訳の分からない私に

「あれっ?物足りなかった?」って……再びキス。

ちょっと!先生。

だんだん深くなるキスに怖くなって押し返したら……

「お仕置きとご褒美をもらって良いって言ったのは尋だよ。
怖がるなら、大人を挑発しないの!」って………涙を拭いてくれた。

私が悪いの??

恨めしそうな顔を向けたら

「はい、ホワイトデーのプレゼント!」

渡されたのは……さっき冷たさを感じた物。

…………………鍵??

「この部屋のだよ。」

えっ?

でも……鍵は卒業してからって……。

私の気持ちが伝わったみたいで

「卒業してからって言ったんだけど……。
4月からは担任じゃあなくなるからな。
今までみたいに準備室に来たり、ゆっくり話す時間は減るはずだ。
泣き虫尋が……一人で泣くより
淋しくなったらここに来た方が良いと思って。
尋の部屋だと、俺が行かないと遠慮して連絡してこないだろ?」って

「先生………。」

「最高の彼氏だろ?
担任じゃなくなるのは……悪いことばかりじゃないんだ。
担任だと一緒にいる時間は多いけど、バレるリスクも増える。
さっきみたいなキスをした後なんて、尋は顔に出るし。」

「もう~」

「それに、尋の卒業が後一年になる。
焦って大人になる必要はないけど……卒業は早くして欲しいからなぁ。
後は、担任だと将来の相談も教師としてだけど
担任を外れたら、彼氏としてでいいからね。
春から嫁っていうのもありだから。」

たぶん先生は、私の不安を知っているから言ってくれてる。

でも……そんな気がするから不思議だよね。

そんな単純なことじゃないし、淋しくなって泣く日もきっとある。

それでも……今日のように先生と一緒にいられたら大丈夫な気がする。