「転校生の、井上和也君です。
みなさん、仲良くしてあげて下さいね。」

担任役の樹先生が、面白そうに悪ふざけをしている。

早速始まった現国の授業。

樹先生のひいきのお陰で、先生は窓際の一番後ろの席。

隣は、もちろん私。

「伊藤さん、井上君は教科書を持っていないので……
席をくっつけて見せてあげて下さいね。」って 

先生と同じ時間を過ごす。

隣の席で教科書を見せてる。

だるそうに片手をついて、窓の外を眺める先生。

私のエゴだった?

先生は………つまらない?

胸が押し潰されそうになった時。

私の左手を、先生の右手が捉えた。

えっ!

チラッとこっちを見て、唇の端を上げて笑う先生。

口パクで『ちょっとだけな。』と言って

机のしたで恋人繋ぎをしている。

キスだってしているのに……ドキドキが止まらない。

制服姿の先生と、一緒にいるだけでも幸せなことなのに………。

1度ギュッと握って……

繋いだ時と同じに、唐突に離された。

先生を見ると、顎で前を示す。

指示通り前を見ると、ニヤニヤ笑う樹先生がいた。

私のノートを引っ張ると………

『覚悟しろよ。隣に来い。』と………。

隣??

キョトンとする私に………

『俺の部屋』と再び書き残した。

………………たった10分の授業。

それでも………2度と訪れる事のない…………貴重な時間。

色々なクラスメイトが、先生をチラチラ見ている。

この中にも、本気で先生を好きな子がいるはず。

最後にこの時間が持てて良かった。