「失礼します。」

職員室に持って行くと

「あぁ、和也先生なら……数学準備室に行ったよ。
伊藤さんが来たら伝えてって。
ご苦労だけど、それ持って3階ね!」と教えてくれたのは

部活顧問の大川先生。

まじで~

げんなり顔の私に………

「『今日は元気がなかったから、相談にのります。
部活は休むと思ってください。』って言われたから
しっかり聞いてもらえ!」って笑って頭をさすられた。

「はい、ありがとうございます………。」

根回しの良さに苦笑いが出る。




コンコン。

「どうぞ。」

いつもより重く感じるドアを開けて入ると……

「ご苦労さん。」と、ノートの山を受け取ってくれる。

呼び出すための口実なら、ノートじゃなくてもいいのでは??

「重かった?」

「当たり前!
おまけに、3階なんて……あり得ないでしょう!」

怒る私に

「だって、罰ゲームだから。」

「罰ゲーム??」

「そっ!
何度言っても、一人で抱えちゃう尋に………お仕置き。」って……。

やっぱりバレてた………。

別に、内緒にした訳でも………

一人で抱えてた訳でも……ないよ。

ただ…………

甘えてばかりだから…………怖くなっただけ。

いつか……………離れないかって………。

「尋?
お前は………どうしたら安心する?
どうすれば……………甘えてくれる?
このまま………挨拶に行く覚悟はあるからな。」

甘えてるよ?

甘え過ぎて……不安になるんだよ?

挨拶って?

覚悟って……何??

先生…………何を言ってるの??

「家族が欲しければ、俺がなってやる。
…………だから、授業中にあんな顔はするな………。
するなら、二人の時にしろ。」

あんな顔って??

「自覚なしかぁ。
まぁ、いいや。
…………で?何があった?」

伝えたい事は色々あったのに…………

言葉にすると、嫌な自分が出てきそうだから……

メールを見せた。

黙って読む先生の眉間には、深い縦じわが刻まれていく。

読み終わった先生に……

「尋、やっぱり挨拶に行こうか?」って……。

先生は何を考えてるの?

挨拶がどういうものか………高校生の私でも分かる。

私にそれだけの価値があるとは思えないのに……

何故、先生はそう言ってくれるの??

「尋……。
俺は、尋を一人にしない。
この間も言ったけど………淋しい思いをさせるくらいなら
仕事を辞める覚悟だって………嫁にする覚悟だってある。
卒業まで待つのは………尋に高校生活を送らせたいからだから。
ご両親が納得してくれるなら、籍を入れても良い。
俺の奥さんとして………学校生活が送れたら一番いいと思ってる。
ただ…………別れさせられる可能性があるから…………行動に移せてないけど。
だから………
尋がさっきみたいな顔をするなら、もらいに行くよ。」って……。

ここがマンションならなぁ。

くっついて甘えたいけど………

やっぱり意地っ張りな私が…………顔を覗かせる。