キッチンでビーフシチューを温めていたら

「あれっ?………尋ちゃん、帰ってたの?」と立ち上がった。

青白い顔をしたお姉ちゃん。

「大丈夫?顔色が悪いよ?自分で出来るから寝てて。」

心配して座らせても……

「ううん、せっかく尋ちゃんが帰って来てくれたんだもん。」と譲らない。

私よりも一回り小さい身体なのに、母親よりも頼っている。

結局、椅子に座って……ご飯が出来るまでお姉ちゃんを眺めていた。

「尋ちゃん、何か困ってることはない?
彼氏さんとは仲良くしてる?」

何気ない会話だけど……

お姉ちゃんが、彼氏の事を聞きたがっているのが伝わる。

「仲良しだよ。
大学が忙しくて、中々紹介出来ないけど………
落ち着いたら、お姉ちゃんに会わせるね。」

本当は、学校の先生でクラス担任って言ったら………どうするんだろう。

卒業して……先生が『お姉ちゃんに会っても良いよ』って言ってくれたら

お母さん代わりのお姉ちゃんには、会って認めてもらいたいって思うの。

まだ後、1年以上先の話しだけどね。

「生活費やご飯は?
一応、尋ちゃんに預けておくから……彼の負担にならないようにしてね。
家は、共働きだから十分置いてあるから。
迷惑をかけないようにして、今の幸せが続くように努力をしてね。」って。

「私が幸せだって、どうして思うの?」

今日、初めて彼氏の話しをしただけで……今まで何も言ってない。

ノロケも楽しい話しもしてないのに。

「だてに、尋ちゃんのお姉ちゃんを20年近くやってないよ!
幸せなのは、顔に出てるもん。」って。

「尋ちゃんが幸せで、彼の側にいたいって思うなら……
無理して帰って来なくても良いからね。
でも、迷惑をかけるけど……家が淋しいから帰らないんだって言うなら……
バイトは行く必要がないから、辞めても良いの。
…………一人にしないから帰っておいでね。」

決して人の負担にならないように、いつも気を使うお姉ちゃん。

姉妹の私にすら弱味を見せようとしないの。

本当は、誰よりも寂しがりで泣き虫で……甘えん坊なのに。

そんなお姉ちゃんが、ウチの親は………可愛いくて仕方がない。

生意気な私よりも、素直なお姉ちゃんが良いのは当たり前だけど……。

本当は私だって、素直になってみようかな?って思うんだ。

でも、お姉ちゃんが先にやってしまうから………出来なくなるけどね。