「ただいま。お姉ちゃん、いる?」

10日ぶりの我が家は、電気が点いてるのにとても静か。

「お姉ちゃん??」

リビングには、ソファーで眠る姉の姿が……。

卒業を待つばかりの今は……

もうすぐ始まる就職前実習とバイトで、大忙しだと言っていた。

4月から、念願の幼稚園教師になることが決まっている。

なるべく負担をかけないように

今は樹先生のマンションを、主に生活の拠点にさせて貰っているの。

先月、先生もお隣に引っ越して来てくれたから

1ヶ月の間に、1週間も帰ってないと思う。

今日も、ご飯を作ってはいけないと思って……連絡しないで帰ったのに

キッチンには、私の大好きな肉じゃがとブロッコリーの入った

ビーフシチューが置いてあった。

お姉ちゃんの優しさが嬉しい半面、待たれる罪悪感が……

重くのし掛かってくる。

「待たないで。
待っても……お父さんもお母さんも……帰って来ないんだから。
こんな淋しい家に、私は帰らないんだよ。
だから、お姉ちゃんも……もう、自由に生きて。」って言いたいのに

もしも、これを言って……本当にお姉ちゃんがいなくなったら………

私は何処に帰ったら良いんだろう?とも思って………

ワガママだけど………怖くて言えない。