「ただいま。」

玄関の鍵を自分で開けて、真っ暗い部屋に入ってくる先生。

ソファーで丸まっている私を、抱き起こしてくれる。

膝に座らせて、肩にアゴをのせてピッタリとくっつく。

「尋、ただいま。」

手紙を貰ってから……ずっと緊張していた気がする。

チョコを貰ったの?

告白された?

聞きたいけど聞くのが怖い。

「電気………点けても良い?」

真っ暗な部屋に先生と二人っきりなのに……

ドキドキもキュンともしない。

あるのは不安だけ。

首を振る私に

「尋の不安は……チョコを貰ったかってこと?
それとも、告白された?ってこと??」

私の気持ちを的確に当てる先生にびっくりして、顔を上げると。

暗がりでも分かる笑顔で

「はぁちゃんに聞いた。
どっちもないよ!」って。

「バレンタインにチョコを貰わないように逃げるなんて
学生の頃には、考えもしなかった。
樹と二人で、可愛い彼女達のために頑張ったよ!」

だから……いくら探しても見つからなかったんだ。

「納得した?
だったら、いつまでも拗ねてないで……
明るい部屋で、チョコをちょうだい。」って。

「……………先生。」

「もちろん、頑張った彼氏にチョコだけってことはないよね?
キスは、電気を点ける前と後………どっちが良い?
好きな方で尋がして!」って……この間と同じように目を閉じる。

えっ!また私がするの??

でも……………貰わないで逃げてくれたんだ…………。

リモコンを手に取って………

明るい部屋でキスをした。

チュッ。

一瞬のキスは……

今回も捕まって、嵐にあいました。